"インクルーシブリーダーシップ"で 企業力向上へ 誰もが輝ける社会に ―特別対談

"インクルーシブリーダーシップ"で
 企業力向上へ
誰もが輝ける社会に ―特別対談

 
MS&ADインシュアランス グループ
ホールディングス株式会社 取締役会長
柄澤康喜氏
1975年住友海上火災保険(現・三井住友海上火災保険)に入社。執行役員経営企画部長、常務、専務を経て、2010年に代表取締役社長に就任。14年6月からMS&ADインシュアランス グループホールディングス取締役社長 グループCEOを経て20年6月に取締役会長に。経団連ではダイバーシティ推進委員会の委員長を務める。
 


 
Japan Intercultural Consulting 社長
ロッシェル・カップ氏
1986年イエール大卒。米国の国際コンサルティング企業、安田信託銀行(現 みずほ信託銀行)の国際広報スペシャリストを経て、ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティングを設立。異文化コミュニケーションや人事管理、リーダーシップと組織活性化を専門とする経営コンサルタント。

保険・金融グループのMS&ADインシュアランス グループはD&I(ダイバーシティー&インクルージョン:多様性と包摂)の推進を経営基盤の中核に据え、女性や外国人、障がい者など、すべての社員が仕事を通じて成長できる環境整備を進める。同社の柄澤康喜会長と社外取締役を務めるロッシェル・カップ氏が対談。柄澤氏は企業力強化の条件に「インクルーシブ(包摂的)リーダーシップの発揮」を挙げ、カップ氏は「誰もが輝ける社会の実現には人材の多様性確保は不可欠」と強調した。


96%の企業「D&I重要」
 
 ―日本企業でD&Iはどの程度進んでいますか。
 柄澤 コロナ禍の現在、企業は変化への対応力と人材の多様性が求められています。経団連が会員企業に対して実施したアンケート調査によると、D&Iの施策について「重要」と回答した企業は全体の96%と関心の高さがうかがえる一方で「経営に成果が出るまで時間がかかる」といった課題の声も上がっています。
 女性活躍についても9割超の企業が「女性管理職・役員を増やすことは重要」と認識しているものの、日本は諸外国に比べて取り組みのスピードが遅いのが実情です。経団連はこうした状況に危機感を抱いており、「2030年までに女性役員比率30%以上」という野心的な目標を掲げ、日本企業のD&Iの取り組みを推進しているところです。
 カップ 残念ながら日本での女性活躍に関する社会的議論は米国に30年ほど後れを取っています。ただ、企業経営者が女性の積極的登用を意識し始めたことは素晴らしいことです。
 働く女性の意識も変化しつつあります。こうした動きは企業のグローバル化と人材の多様性確保への第一歩として評価したいと思います。


 
女性社員が意思決定に関与
 
 ―MS&ADグループの具体的な取り組みについて教えてください。
 柄澤: 女性がいきいきと働き続けられるために当社グループは
①男性社員を含めた育児休暇取得など働く環境の整備
②メンター制度の導入や女性部長のネットワークを通じたタレントパイプラインの構築
③管理職向けのアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)研修による多様性を生かすアサイメント(業務の割り振り)力の向上
――の3つの取り組みを進めています。
 一連の取り組みにより20年までの目標「女性管理職比率15%」はクリアし、今年4月時点にはグループ全体で16・1%まで進んでいます。今後は意思決定層のさらなる多様化のため、30年をめどに女性管理職比率30%以上、執行役員を含む女性役員比率を30%以上、部下を持つ管理職であるライン長の女性比率15%を新たな目標に加えました。
 カップ: MS&ADグループには私を含め女性社外取締役を2人選んでいて、日本企業では意欲的な取り組みです。女性管理職比率が着実に向上している点もうれしく思います。女性社員が人材育成を通じて実力を付けて支店長や関連会社の取締役などに登用され、組織の意思決定に関与するという好循環が生まれる。ひいてはグループ力のアップにつながるというモデルケースといえるでしょう。
 柄澤: D&I推進には障がい者、外国人材、シニアの活用も欠かせません。当社グループには約900人の障がい者が働いており、様々な困難を克服している彼らこそがイノベーションの源泉になっています。
 外国人従業員は1万5千人ほどおり、グループ全体のおよそ3割を占めます。文化や言語など多様な価値観やバックグラウンドを持つ人たちが一つのチームとなって働くことが新たなマーケット創出に寄与しているといえるでしょう。こうした多様な人材の雇用を通じ、多様性と包摂性のある社会の実現を目指しています。
 カップ: 人手不足が深刻化する日本では外国人材をどう生かすかが企業の重要な経営課題の一つです。MS&ADグループは古くから世界中に子会社や拠点を持ち、様々な国籍を有する従業員が所属しているのが強みです。
 社会課題の解決につながる事業を表彰するサステナビリティコンテストでは海外の現地法人からも多数応募がありました。様々な取り組み事例をグループ全体で共有し、グローバルに展開してほしいと期待しています。


 
持続的成長へ適材適所
 
 ―D&Iを進める上で何が必要だと考えますか。
 柄澤: 時代とともにリーダーシップも変化します。企業に創造性や多様性が求められる現代は、個人の考えや価値観を尊重しながら組織をまとめるインクルーシブリーダーシップが重要です。そうしたリーダーの育成にPBL(課題解決型プロジェクト学習)メソッドがあります。部下との対話を通じて彼らに課題の解決策を考えさせ、答えを引き出す力を付ける手法で、リーダーには「聞く力」が求められます。インクルーシブリーダーシップを発揮することで多様性の〝真の力〟を引き出し、持続的成長を促す原動力になると考えています。
 カップ: 世界の潮流としてサーバントリーダーシップが注目されています。部下がそれぞれの能力を発揮して最良のパフォーマンスを上げるために上司は彼らを支え、職場環境を整備する役割で、従来の命令型のリーダーシップとは一線を画すものです。いわばスポーツ選手のコーチ役のような存在で、部下の価値観を認めるインクルーシブリーダーシップと共通点が多いといえるでしょう。


 ―最後に今後の取り組みについて教えてください。
 柄澤: 当社グループのミッションである「活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支える」を実現するためには様々なステークホルダーと連携し、多岐にわたる課題解決に取り組む必要があります。D&I戦略を加速し、多様性から生まれるイノベーション(技術革新)を社会課題の解決に生かすことで、持続可能な社会の実現とグループの企業価値の向上を目指していきます。
 カップ: 企業の持続的成長には適材適所が必須です。従業員がやりがいを感じることで生産性が上がり、従業員自身も成長します。職場の環境整備や人材育成に注力しているMS&ADグループに今後も期待しています。

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