自然資本の損失は企業リスクに 2020年型経営のスタンダードとは

自然資本リスク

2019.3.19

自然資本の損失は企業リスクに
2020年型経営のスタンダードとは

2015年9月、国連サミットにおいて、2030年までの国際社会が目指すべき目標として、「持続可能な開発目標」(SDGs)が採択された。パリ協定では脱炭素社会への移行を掲げ、経済活動も含め、地域と地球規模の持続可能性を目指すことが合意された。日本においても、企業、行政、教育機関など様々なレベルにおいてSDGsで示された社会的課題解決のための統合的な取り組みが進められている。一方、リーマンショック後、急速に資本市場の注目を集めているのがESG投資である。ESG投資は、環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)という3つの視点を投資判断に組み込むもので、投資マネーが潤沢な欧米市場で主流になりつつある投資行動である。こうしたESG投資の流れも後押しし、SDGsを経営戦略に組み込む企業が急増している。

「自然資本」はSDGsの土台

SDGsで示された社会的課題を自社のビジネスチャンスとして捉え、長期的な経営戦略に取り込むためには、SDGs全体を俯瞰し、統合的な取り組みを進める必要がある。そうすることで、一つのプロジェクトで複数の成果を出すことができる可能性があるからだ。そして、SDGsを統合的に思考するための必要条件が、「自然資本」である。この「自然資本」の保全は、下の図にもある通り、経済と社会がサステナブルであるための土台となるもので、他のSDGsの達成を下支えするものだ。

SDGs Wedding Cake
SDGs Wedding Cake
原図(Graphics by Jerker Lokrantz/Azote)の考案者:Johan Rockström & Pavan Sukhdevに許諾を得てMS&ADインターリスク総研株式会社が加筆 (不許複製・禁無断転載)

自然の価値の評価

MS&ADインシュアランスグループでは、国内外の事業における自然資本への影響を机上で定量評価するサービスを提供している。事業全体の自然資本への関わりを分析し、また、海外拠点での事業活動やサプライチェーンが、周辺の自然資本にどのような影響を与えているのか、具体的なリスク評価を行っている。

事業活動における持続可能な資源利用

企業のサステナビリティは、まさしくモノ・サービスが生み出される自然資本の持続可能な利用と連動している。例えば、森林破壊ゼロ宣言を出した国であれば、森林破壊を招く資材を使った商品の販売を禁止する法律が掲げられることもありうる。商品の原材料調達先企業が環境保護に対する意識が低いまま採取を続けていれば、その資材から作られた商品も販売できなくなる可能性が出てくるのだ。今後はモノ・サービスそのものだけでなく、原産国やサプライチェーンも含めたビジネスモデルの変革に迫られるだろう。

また、自然資本は無限ではない。無秩序な搾取により資源が枯渇すれば、原材料調達先の国が規制をかけてくる可能性もある。本来ならば水が豊富な地域であるにも関わらず、近隣工場での水の大量使用により、水不足となってしまっている国もある。こうしたリスクに敏感なグローバル企業では、すでに原材料の枯渇を見越して、それに代わる、持続可能な原材料の入手方法を構築する動きを見せ始めた。こうしたリスクマネジメントとしてまず必要なのは、自社の活動に自然からの恵みがどれほど関わっているかを把握するリスク診断だ。

MS&ADインシュアランスグループでは、自然環境への影響が特に大きいと想定される原材料を特定し、優先課題を選定の上、対応方法の検討およびサプライチェーンマネジメントの策定を支援するサービスも展開しており、自然資本を基盤にグローバルに繋がる企業活動を支えていく。また、環境効率や持続可能な資源の利用を促すサプライチェーンマネジメントや生物多様性を向上させる土地利用の提案など、持続可能な資源利用や土地利用に資する各種リスクコンサルティングサービスを提供している。

生物多様性の保全

「自然資本」を取り巻く環境は刻一刻と変化している。特に生物多様性の保全は、会社単体の取り組みでは解決がむずかしい。MS&ADインシュアランスグループでは、2016年7月に、21世紀に向けて金融機関が「自然資本」という考え方を金融商品やサービスの中に取り入れていくことを宣言した「自然資本宣言(Natural Capital Declaration)」の趣旨に賛同し、署名している。

自然資本宣言への署名

自然資本宣言(Natural Capital Declaration)
自然資本宣言(Natural Capital Declaration)
自然資本宣言への署名
自然資本宣言への署名

また、生物多様性の保全と生物資源の持続的な利用について、企業が集まり共同研究する「一般社団法人 企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」の設立(2008年4月)以来、会長会社として活動をサポートしている。JBIBは、国内企業の環境に関する取り組みの参考となるよう、生物多様性に配慮した土地利用のためのガイドラインや生物多様性に配慮した原材料調達のガイド等を作成し、その成果文書を公表している。

生物多様性の保全活動

JBIBのロゴマーク
JBIBのロゴマーク
JBIBのロゴマーク
JBIBのロゴマーク

こうした多様な主体がパートナーシップを通じて、生物多様性の保全にむけた様々な取り組みを各企業から社会全体へ拡大していくことで、地球規模の「自然資本」の持続可能性向上に一歩近づくことができる。そして、もう一つ。自然が相手の取り組みに必要なのは時間だ。長期間、そして継続的に取り組まなければ成果は出ない。


MS&ADインシュアランスグループでは、インドネシア・ジャワ島のジョグジャカルタ特別州において熱帯林再生プロジェクトを推進、1990年代後半の経済危機時に地元住民の不法伐採により劣化した野生動物保護林の修復と再生を行うため、2005年よりインドネシア政府と連携し、約30万本の植樹を行ってきた。さらに地元住民の経済的自立を目的とした農業技術指導や小学校教師への環境教育活動などを通して、森林の再生と持続可能な地域社会の形成に向けた取り組みも続けている。

インドネシア熱帯林再生プロジェクト

インドネシア熱帯林再生プロジェクト

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